とある「格」を輸入してみたら SVOO がシックリきた件
この格、もしかして SVOO がシックリくるのでは!?
英文法の中で、「〇〇格」がつくものといえば
「主格」「所有格」「目的格」が思い浮かぶだろう。
I,my,me や you,your,you みたいな人称代名詞の活用や
関係代名詞に登場するイメージがある。
そして、最近初耳であった
SVC の「主格補語」とSVOC の「目的格補語」も
「〇〇格」という言葉がついている。
主格補語と目的格補語については
すぐ下の「第 5 文型と目的格補語」で
まとめてあるので併せてご覧いただきたい。
今回の記事はこの「続編」のようなものである。
文型を深く理解するカギはもしかすると「格」の存在なのでは?
と思い、新たにその記事を書いていた。
SVC と SVOC と同じくらい特殊と感じられるのは
やはり SVOO だろう。
目的語を二つ取る文型で
それぞれ「間接目的語」「直接目的語」と呼ばれている。
だが「間接」と「直接」という言葉だと
シックリこないような気がする
そこで今の英語にはない
とある「格」を入れてみたら…?
格について
格というのは、簡単に言えば
日本語でいう「が」「は」「の」「に」「を」
のような助詞の役割をするものと考えれば問題ない。
日本語にも「格助詞」という
今回のテーマにピッタリの助詞があるので、
それと英語の格とを比較してみようと思う。
なお、日本語の格助詞の役割は多数あるが、
今回は英語の格に対応するものだけに絞って
紹介してあることにご留意いただきたい。
簡単な表にまとめると以下のようになる。
日本語の「に」と「を」に当たる部分が、
英語ではまとめて「目的格」になっている。
目的格というと
me や you, him, her に当たる部分だが
これだけで「~に」「~を」
の両方の意味を表せる。
というよりは「~に」「~を」にあたるスペルが
同じであるから一緒にした感じだろうか。
一見こうした方が楽そうに見えるが、
同じスペルだからと言ってひとくくりにすると
困ってしまうことが起こる。
ひとくくりにすると不都合なこと
それがイントロで登場した文型
SVOO だ。
分かる人であれば
「一番目の O は間接目的語で
二番目の O は直接目的語」
とすぐ出るかもしれないが、
単に「SVOO」 と書かれていた場合
「この二つの目的語は同じものなの?」
と誤解される可能性がある。
本当なら「~に」と「~を」なんて
似つかないし意味も違ってくるはずなのに
単に同じスペルだからといって
ひとくくりにすると、
「~に」の O なのか、「~を」の Oなのか
区別がつかなくなり、初学者には混乱のもとに
なるのではないだろうか。
「間接目的語」「直接目的語」も分かりにくい
一応、英語で英文法の説明をしているところでは
direct object(直接目的語)
indirect object (間接目的語)
とそれに対応する単語の説明はされているが
「間接目的語」や「直接目的語」という言葉を聞いて
これがどんな働きをするのかすぐに思い浮かべられるだろうか?
「~に」にあたるものが間接目的語で
「~を」にあたるものが直接目的語
というのが良くありそうな回答ではあるが
与えられる相手の役割を示す助詞がなぜ「間接」と呼ばれて、
対象になる役割を持つ助詞がなぜ「直接」と呼ばれるのか
これもまた説明しなければいけない。
そして、またややこしくなる…。
こうして考えてみると、
「間接」とか「直接」という言葉では
ピンと来ない人が多いのではないだろうか。
とある「格」を輸入してみた
こういう問題に直面したので、
どうにか解決できそうなものがないか
「格」について調べてみた。
今の英語にはないが
この SVOO をスッキリと説明できそうな
とある「格」を見つけたので、
それを輸入して当てはめてみることにした。
そのとある「格」とは
「与格」「対格」
である。
ドイツ語やフランス語、ロシア語 等
ではこういう格の名前を
聞いたことがあるかもしれない。
今の英語では廃止されてしまっているが、
昔の英語は、与格・対格というのがあったらしい。
細かい役割等は抜きにして、名前を借りていきたいと思う。
これを踏まえて、言語学での格の呼び方を
追加したものが以下の表になる
一見難しそうな単語かもしれないが、
主語を表す格 (~は、~が) ➡ 主格
所属・所有を表す格 (~の) ➡ 属格(所有格)
与えられる相手を表す格 (~に)➡ 与格
対象を表す格 (~を) ➡ 対格
と、意味的にもつながるので
分かりやすさはピカイチではないだろうか。
与格は「与える」の意味なのでは?
と思うかもしれないが、
与格は英語で dative で
ラテン語で「与えられた」というのが由来のようだ。
きちんと受け身の形であることが分かる。
さて、与格・対格を使うからには
新たに名前を付けてみたいと思う。
与格・対格は目的語に当たるので
「主格補語」「目的格補語」になぞらえて
「与格目的語」「対格目的語」と
仮に名付けておくことにする。
SVOO を「与格」「対格」で呼んでみた
ようやくではあるが、SVOO を
与格・対格を使って呼んでみることにしよう。
順番は覚えないといけないが
一番目の O は 「~に」なので「与格目的語」
二番目の O は 「~を」なので「対格目的語」
ということになる。
与格の「与」は「与えられる相手」
ということは、「与格目的語」は
「与えられる相手」を表す目的語で
対格の「対」は「対象」
ということは、「対格目的語」は
「対象」を表す目的語
となる。
「直接」とか「間接」では遠回りをしないといけなく、
説明するとややこしくなるものが、
与格・対格という言葉を使うと
シンプルかつ一貫しているので分かりやすい
と感じるのではないだろうか。
SVOO を取る動詞といえば?
基本的に SVOO を取る動詞といえば
give, offer , teach などの「与える系」
いわゆる「授与動詞」と呼ばれるものが多い。
与えるの意味を確認すると
他の人に~
相手に~
といった感じで「相手ありき」で
記載されているのが分かる
つまり、「与える」という言葉を成立させるには
単に与える対象のモノや情報、内容だけでなく
それを与えられる相手もいなければならない
与える側と与えられる側の両方がいて
初めて成り立つのが SVOO なのだろう。
授与動詞は「与える系」の動詞。
ということは、与える対象物(対格目的語)だけでなく
与えられる相手(与格目的語)が必要だ。
そうすると、目的語が二つ必要であることが分かるので
それがある文型は SVOO ただ一つである。
もしくは、与格目的語を必要としているのだから
それがある文型は SVOO ただ一つということもできる。
意味を理解する必要はあるが
「与える系」の動詞が来たら
「間接目的語」「直接目的語」がある SVOO をとる
とよくある文法書の文章通りに覚えるよりも
「与える系」の動詞が来たら
与えられる相手を表す「与格目的語」が必要で
それがある文型は SVOO だ
といった感じに
「与」という漢字にフックが多くかかるような
覚え方なら分かりやすくなるのではないだろうか。
どちらで覚えるかは自由ではあるが
自分は「与格」「対格」を輸入してみたら
すごくシックリ来てそのインパクトが大きかったので、
自分の範囲内ではあるがこれからも使ってみようと思う。